目立ち始めていたZillow Offersの収益性の悪さ

それからZillowは宣言通り買取再販の取引数を伸ばし、業界トップのOpedoorには及ばないものの第二位のOfferpadを抜き去り、あっという間にiBuyer大手の一角を占めるようになりました。

iBuyerの買取物件数推移

ZillowがiBuyer事業におけるマーケットシェアを伸ばす一方で、様々なデータからZillow Offersの収益性の悪さも明らかになってきました。これは先月の投稿「Opendoor/Zillow/Offerpad、iBuyer3 強の収益モデルを徹底分析」でも解説した通りです。

記事内のグラフを下に再掲しましたが、簡単に言うとZillowはOpendoor・Offerpadと比較して粗利率( 粗利=転売価格+周辺領域売上−物件取得原価)が低く、結果として1物件あたり最終利益が大幅な赤字になっているという話でした。

Opendoorに続いてOfferpadも上場を果たし、活況の続くiBuyer市場。かつては収益モデルが謎に包まれていましたが、上場企業が増えてきたことで様々な情報がオープンになってきています。

中でも、不動産テック評論家のMike Delprete氏のiBuyer3社(Zillow・Opendoor・Offerpad)の分析がとても興味深かったので、これの翻訳をベースにしながら解説をしたいと思います。
https://www.inman.com/2021/06/10/offerpad-is-a-more-profitable-flavor-of-ibuying-mike-delprete/

まずはこちらのデータをご覧ください。

これは各社の1物件あたり最終利益をまとめたものです。
Zillowが1物件あたり$29,517の赤字、Offerpadが1物件あたり$12,998の赤字を出しているのと対照的に、Offerpadは1物件あたり$229の赤字に留まり、黒字化まであと一歩のところまで迫っています。

同じiBuyerビジネスでありながら、なぜこのような収益構造の違いが生まれるのでしょうか。いくつかのデータからOfferpadの高いパフォーマンスの要因を紐解いていきます。

粗利率: OfferpadとOpendoorに大きな差はない

以前投稿した「【米国不動産テック】2020年総まとめ&2021年展望」の記事で、2021年はSPAC×不動産テックの組み合わせで上場する企業が増える可能性が高いと解説し、その予備軍として15社を下の図を使って紹介しました。

【米国不動産テック】2020年総まとめ&2021年展望より再掲

予想が当たって自画自賛するわけではないですが、まだ4月を終えた時点なのにこの中から4社が上場見込みで、加えて2社が大型の資金調達を行いました。不動産テックへの期待と市場全体のカネ余りが相まって、予想以上のハイスピードで上場や資金調達が続出しています。

以下が上場予備軍として紹介した企業と、2021年に入ってからの資本政策の動きをまとめたものです。

3年弱にわたって書いてきているこのブログですが、ポータルサイトの分野は不動産テックの中で最大のビジネスであるにもかかわらず紹介することはあまり多くありませんでした。

というのも、2014年に業界1位のZillowが2位のTruliaを買収したことによりZillowトップの座は揺るぎないものとなり、その勢力図を揺るがすような変化は基本的にはなかったからです。

ところが、2020年末からその状況が一変します。
商業用不動産トップのプラットフォームで、Zillowに匹敵する時価総額を誇るCoStarが住宅売買領域への進出を発表したからです。

【参考記事】
時価総額3.6兆円!商業用不動産テックの覇者CoStarがZillow と全面対決へ
【米国不動産テック】2020年総まとめ&2021年展望

これをきっかけに既存大手も危機感を強めたのか、今年に入っても大きなニュースが続いており、2021年は不動産ポータル激動の年になる予感がします。
そういった背景から、今回は住宅売買ポータルBIG3であるZillow・Realtor.com・Redfinと新規参入を進めるCoStarの計4社の最新動向を一気にまとめます。

Zillow: 住宅売買領域に特化して着々とサービス拡充

・ShowingTimeを$500Mで買収

ここ数年、アメリカの不動産テック各社は「End-to-End」を合言葉に、物件探しから契約まで一気通貫したサービス提供を目指しています。全米最大のポータルを保有するZillowも買収戦略によってCRM(LoopNet)や住宅ローン(Zillow Home Loans)といった物件探し以降の分野に進出していましたが、ここに「内見」という重要なプロセスが加わることになりました。

買収後の具体的な戦略は公表されていませんが、普通に考えればZillowのポータルと統合してサイト上で内見予約まで完了できるようにするのではないかと思います。他社は「内見希望の問い合わせ」までしかカバーできていないので、これが大きな差別化要素になります。

2020年のアメリカ不動産テック業界はOpendoorの華々しい上場によって幕を閉じました。そして2021年に入り、Opendoorと双璧を成す存在として業界の盛り上がりを牽引してきたCompassもIPO申請を行いました。

【参考記事】
Opendoor上場!衝撃の時価総額1.6兆円デビューを徹底解説
Opendoorがついに上場へ。バリュエーションと上場スキームを徹底解説

Compassは資金調達ラウンドで$6.4B(約6400億円)の評価額をつけ、ソフトバンクビジョンファンドを筆頭に累計$1.5B(約1500億円)を調達してきた新世代の不動産仲介会社です。

一方で、このブログでも再三解説してきたようにトップエージェント採用のための先行投資がかさむビジネスモデルで収益性が疑問視されており、第二のWeWorkになるのではという懸念もありました。

本日、S-1(上場目論見書)が公開され、これまでベールに包まれていたCompassの財務状況が明らかになったので、これを分析してみたいと思います。

Compassの財務状況+競合比較

売上規模3720億円と大きいが、依然として273億円の赤字

注目ポイントは、2020年通期売上が$3,720M(約3720億円)ある一方で、大方の予想通り$273M(約273億円)という多額の営業損失を抱えている点です。

業界最大手Realogyに迫る勢いの売上成長

過去3年の売上推移の2020年通期の詳細をまとめました。

前回の投稿では、米国不動産の市場全体の動向を解説しました。そちらでもまとめた通り、新型コロナウイルスが市況に与えた影響は意外なほど少なく、時期ごとの浮き沈みはあったものの一年を通して見れば、むしろ好況だったと言えます。

そういった好調な市況を追い風に、2020年も不動産テック・スタートアップ業界は様々なビッグニュースが盛りだくさんでした。

今回はその中でも絶対にチェックしておくべきビッグニュース3つと、今年2021年に注目すべきポイント2つ、合計5つのポイントににギュッと凝縮して解説したいと思います。

2020年ニュース①: Opendoorがついに株式上場

名だたる不動産テック企業や老舗仲介会社がこぞって参入し一大産業となったiBuyer。この業態のパイオニアがOpendoorです。
累計$1.5B(約1,500億円)にのぼる資金調達に成功した同社は、ここ数年の米国不動産テックの盛り上がりを象徴する存在でした。

そのOpendoorがついに節目の株式上場を果たすというのは業界全体にとって大きなニュースでした。広い意味では不動産テックに位置づけられるWeWorkが上場に失敗したばかりということもあり、Opendoorの上場の成否を業界関係者は固唾を呑んで見守っていました。

そんな中で迎えた12月21日、Opendoorは直近の資金調達ラウンドや上場時の想定を大きく上回る$16B(約1.6兆円)の時価総額で上場デビューを飾りました。
このような大きな成功事例が生まれたことは、WeWorkショックを乗り越えて不動産テック業界が更に盛り上がっていくきっかけになりそうです。

2020年3月に新型コロナウイルスによってロックダウンが宣言され、株価が低迷し、経済活動が制限されたときには、リーマンショックのような危機の再来を危惧する声が不動産業界でも上がりました。
しかし、蓋を開けてみると、不動産業界は意外なほどすぐに持ち直し、好況のまま2020年を終えました。

不動産業界の好況ぶりはニュース等でも伝えられていますが、今回はRedfin Data Centerのデータを使用して、より定量的に2020年のマーケットが通年でどのように推移したのかを見てみたいと思います。

※いずれのデータも中古物件売買に関する4週移動平均の統計データで、2018年・2019年・2020年の実数と前年比の推移を示しています。エリアはRedfin展開エリアに限定されていますが、同社は国内の主だったマーケットは網羅しているのでアメリカ全体の傾向と一致しています。

成約物件数

こちらは中古物件売買の実数と前年比の推移を示したものです。ご覧の通り、ロックダウンの影響を受けた4〜6月には大きく落ち込んだものの、7月以降は2018年・2019年を大きく上回る水準で推移しました。

通年で見ると、当該エリアの年間成約数が2018年・2019年がともに347万件だったのに対し、2020年は345万件とほぼ同じ水準で着地した格好となります。

好調な不動産市場の背景として、在宅勤務に浸透によって都市部から郊外への移動が増加したというニュースが取り上げられがちです。しかし、これはあくまでごく一部の都市部のトレンドに過ぎません。何より大きな後押しとなったのはコロナの影響で住宅ローンが空前の低金利となったことです。

https://www.bloomberg.com/news/articles/2020-12-21/opendoor-shares-slip-in-market-debut-following-merger-with-spac

12月21日にOpendoorがついにNasdaqに上場しました。
9月の投稿で上場スキームや想定時価総額を解説しましたが、大方の予想を大きく上回る$16B(約1兆6000億円)という衝撃的な評価額で上場初日を終えました。

Opendoorはこのブログでも幾度となく解説してきましたが、不動産テック業界を牽引してきたユニコーン企業です。今回の華々しい上場は、近年の不動産テックの盛り上がりの一つの集大成とも言える出来事になったと言えます。
加えて個人的にも、同じベイエリアの不動産テック企業として一緒に仕事をすることも多かったので、とても嬉しく励みになるニュースでした。

今回は良い機会なので、いくつかの切り口で上場マーケットにおけるOpendoorおよび不動産テック企業全体の状況について解説します。

Opendoorの評価額推移

このブログでは基本的にアメリカ不動産テックの中でも最大の市場規模である居住用不動産、中でも中古売買を中心に紹介してきましたが、今回は趣向を変えて商業用不動産に焦点を当てたいと思います。
ここで言う商業用不動産とは、具体的にはオフィスや店舗物件の賃貸・売買のことを指します。

Zillow・Redfinをも凌ぐ商業用不動産テックの覇者CoStar

CoStarの凄さをお伝えするために居住用不動産のテック企業の筆頭格であるZillowとRedfinと業績を比較してみました。

ご覧の通り、売上ではZillowに及ばないもののRedfinよりは大きく、何と言っても営業利益ベースで未だに赤字のZillow・Redfinとは対照的にCoStarは380億円の黒字、26%の営業利益率という優等生ぶりが光ります。その結果、なんと時価総額は3.6兆円とZillowをも上回っているのです。

B2Cで居住用不動産を扱っているZillowやRedfinの方が華やかで目立つ存在ですが、利益や時価総額の観点ではCoStarこそがアメリカ不動産テックのトップ企業であると言っても過言ではありません。

CoStarがM&Aにより居住用不動産への参入を検討中

これは明らかにプラットフォーマーとして居住用不動産にも参入する布石です。商業用不動産の覇者であり時価総額ベースでZillowをも凌ぐ存在であるCoStarが、いよいよ米国不動産の本丸である中古住宅売買に乗り込んでくることに業界がざわついています。

※追記: 結局、CoStarはCoreLogicではなく、住宅売買のポータルとエージェント向けツールを提供しているHomesnapという会社を11月23日に$250M(250億円)で買収しました。最終的な買収先は別の企業に落ち着きましたが、CoStarが本格的に住宅売買領域に参入するという方向性自体は報道されていた通りになりました。

米国不動産テックのユニコーン企業の一角、Opendoorがついに上場を果たすというニュースが飛び込んできました。

Opendoorは僕の会社と同じくベイエリアをベースとする不動産テック企業なので、CEOのEric Wuをはじめ経営メンバーとも仲が良いですし、実際にパートナー事業も展開しています。
また、このブログでも何度もニュース解説として登場してもらってお世話になっていることもあり、今回のニュースは個人的にも感慨深いです。
(念のためですが、このブログでのニュース解説はすべて公開情報をベースにしており、守秘義務契約に抵触するような情報は一切発信していません)

コロナ前に打ち合わせで訪問したサンフランシスコのOpendoorの本社オフィス。内装は「家」のコンセプトで統一されていて、受付には家族写真のように社員の子供の頃の写真が飾られています。

まだスクープの段階で十分な確定情報は出ていないのですが、現時点で分かっている範囲で、
1. バリュエーション
2. 上場スキーム

の2点について解説します

1. バリュエーション

それにあたって参考までに、まずは最新のテック企業と不動産テック企業の事例をいくつか紹介します。

テック企業事例①: Slack

市川 紘(Ko Ichikawa)

シリコンバレーの不動産テック企業MovotoでCFOとして勤務。前職はリクルートのSUUMOで、営業→プロダクト→経営企画マネージャー→新規事業開発部長を担当。

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